
謎の韓国プラレールCM
このページでは、私石川定治がプラレールの歴史を調べているときに偶然見つけた、韓国の謎のプラレールCMの紹介と解説をしています。
正体不明の韓国プラレールCM
そもそもの始まりは、私がプラレールの海外展開について調べていた時のこと。グーグルの検索窓に「プラレール 海外」と入力したところ、以下のページがヒットしました。
でろいさんが運営されている「だらだらプラレール日誌」というブログ。その中の「【プラレール研究②】海外プラレールの歴史 中国、韓国編」というページに、東アジア圏でのプラレールの事業展開の話が書かれていたのです。
その中で、1990年代に以下のようなCMが韓国で放映されていたとの話がありました。
きかんしゃトーマスが何等かのセリフを発しながら線路を走る様子を写したCMです。これが今回の記事の考察対象です。
上記はYouTube動画の埋め込みですが、韓国語でナレーションが入っているので日本人には何を話しているのか分かりませんね。でろいさんのブログやX(旧Twitter)でも”謎の韓国のプラレールのCM”と題されており、YouTube動画のタイトルにも「韓国 プラレールのCM?」と”?”が付いています。
一応、でろいさんがこのCMが放映された時期にヨン実業からプラレールが発売されてた、ということは突き止めており、このCMの最後にもヨン実業のロゴが出てきますが、それ以上のことは分かっていませんでした。
しかし、ブログ主は思いました。「俺だったら内容分かるんじゃね?」と。
実はブログ主、韓国語の学習経験があり、ごく簡単な韓国語であれば理解することが出来ます。ハングル文字も読むだけなら造作ないので、機械翻訳も使えば内容が分かるはず。
とまぁ、拙いリスニング力と機械翻訳を駆使しながらなんとか内容を日本語に変換することに成功しました。その結果、とんでもない事実が判明したのです。
スポンサードリンク衝撃の内容
それでは、以下にその内容を記してみます。

ナレーション(及び字幕)「きかんしゃトーマスとなかまたち」

ナレーション「きかんしゃトーマスと仲間たちが競争をしています」
(字幕:「ヒューヒュー、セマウル号遊び」)

トーマス「こんにちは!ムグンファ号!本当に速いね!」
(字幕:「ヒューヒュー、ムグンファ号遊び」)

(字幕:「この製品は電池で動きます」)

トーマス「わぁ!TGVもかっこいいね!」
(字幕:「ヒューヒュー、TGV号遊び」)

ナレーション「“きかんしゃトーマスとなかまたち”は連結して遊ぶことが出来ます」

(最後に「ヨン実業」の企業ロゴとコールが入る)
と、これが韓国のプラレールCMの詳しい内容なのですが、お分かりでしょうか。なんと100系、300系、400系がそれぞれ「セマウル号」「ムグンファ号」「TGV」扱いされているのです!これに気が付いたときに変な笑いが止まりませんでしたよ。
韓国の列車に詳しくない人のために補足しておくと、セマウル号やムグンファ号は韓国の特急列車の名前。TGVはフランスの高速列車の名前です。一応、韓国にも高速列車(KTX)はありますが、CMが放映された当時はまだ未開業でした。
まとめると、トーマスがプラレールの世界で現実の列車たちとかけっこをしており、彼らを「速い!かっこいい!」と褒めている。そしてなぜか韓国やフランスの列車扱いしているという、かなりヘンテコな内容になっています。
なぜ韓国の列車扱い?
では、なぜシンプルに「のぞみ号だ!」や「つばさ号だね!」とは言わずに「ムグンファ号」や「TGV」などと言っているのか。
単純に韓国の人たちに日本の列車に馴染みがないから、という理由もあると思いますが、おそらくそれ以上に「プラレール」という名称が使えない、ということが大きく影響していると考えられます。
件のCMに耳を澄ましていただきたいのですが、CMの中で一切「プラレール」という単語が使われていないことにお気付きでしょうか?プラレールのCMなのにです。ここにこのCMの正体を解く鍵があります。
結論から言ってしまうと、ヨン実業は「プラレール」のライセンスは取得していませんでした。代わりにトーマス関係の玩具全般を韓国内で流通させる契約を取っており、上記の「プラレールトーマス」はその数あるトーマスシリーズの一つとして販売していたものだったのです。
なので、ヨン実業から見れば上記のCMは「プラレールのCM」ではなく「きかんしゃトーマス玩具のCM」ということになります。権利的に「プラレール」の名前を出すことは出来ませんでしたし、権利元が日本にある「100系」や「ひかり号」などの日本名は使えなかった、ということなのでしょう。
ちなみに、2025年現在も韓国では実車系プラレールはタカラトミーの現地法人であるT-ARTS KOREAが、プラレールトーマスはHI貿易が流通を担当しており、プラレールトーマスが独立して韓国に渡った形跡が今も残っています。
↑韓国でのプラレール展開の詳しい歴史を知りたい方はこちらから!
CMの放映局と放送時期について
ここまで、CMの内容についてお話ししましたが、気になるのは「いつ、どこで放映されたのか?」ということでしょう。
てっきりこれは分からないものと思っていたのですが、意外なところからその手がかりを掴むことが出来ました。

こちらは先ほどもお見せしたCMの導入シーン。この右側になんらかのタイトルロゴがあるのにお気づきでしょうか?

これです。これを見た時「もしかして何らかの番組のロゴなのではないか」と思いました。
そこで、ロゴに書かれている文字をGoogleで検索してみると…。

ビンゴ。「燃えろ!トップストライカー」というサッカーアニメがヒットしました。
「燃えろ!トップストライカー」は1991年10月10日から1992年9月24日までテレビ東京系列で放映していたアニメです。
韓国にも輸入され、現地の放送局SBSより、1993年3月8日から6月1日まで毎週月〜木曜日の午後6時10分「子供漫画劇場」という番組にて放送されていました。
これがかなり人気だったようで、韓国内のサッカー人気を後押ししたほか、1994年2月9日〜12月18日に再放送。その後も2000年代まで断続的に再放送されていました。
このことから、このトーマスCMは「燃えろ!トップストライカー」内のコマーシャルとして流されていたことが分かります。子供向け番組ですし、トーマスのCMを流すのにピッタリです。
ヨン実業がトーマスを取り扱っていた時期から察するに1993年の初回放送、または1994年の再放送、はたまたその両方でCMを提供していたことが伺えます。
導入に出てきた2秒程度のタイトルロゴですが、ここから放送時期や放送局まで特定できたのは大収穫でした。
スポンサードリンク最後の謎
というわけで、このCMがヨン実業名義のトーマス玩具紹介CMであることが分かりました。しかし、どんなCMかが分かっただけで、どんな経緯で作られたのかまでは分かりません。以下に残る最後の謎を記述しておきます。
映像は日本で撮影されたものなのか?
その謎とは「CMの映像がどこで撮影されたのか」ということです。日本で撮られた映像を流用したのか、それとも韓国国内で新しくレイアウトを組んで撮影したのか。
しかし、韓国で撮影したならわざわざ製品を韓国に持ち込んだことになりますし、結構手間がかかるように思えます。
それとも日本向けに撮影したビデオを韓国語ナレーションを付けて編集し直したものなのか。これと同じ映像を使用したプラレールビデオが日本にあるのか…。
なんにせよ、プラレールについては流通だけを請け負っていたヨン実業がわざわざレイアウトを組み立て撮影したとは考え辛く、日本で使用した映像を流用したか、レイアウトだけ借りて改めて撮影し直したかのどちらかだと思います。
ただ、これ以上ら考察の域を出ませんし、追求しても何も出ないてましょう。
しかし、考えれば考えるほど不思議なCMではあります。
まとめ
以上、「韓国 謎のプラレールCM」の解説と考察でした。
まとめると、このCMはトーマスシリーズの一つとしてプラレールトーマスが紹介されたものだった、というわけです。なんにせよ、日本の車両が韓国やフランスの特急扱いされていたのは衝撃だったのではないでしょうか。
結構謎扱いされていたこのCM。ですが、この考察によりその正体は掴めたといえるでしょう。